2018年7月27日 卓話:中島 勝規会員

「特殊詐欺対策の現状と使用者責任」

1 特殊詐欺とは
特殊詐欺とは、面識のない不特定の者に対し、電話その他の通信手段を用いて、預貯金口座への振込みその他の方法により現金等をだまし取る詐欺のことです。平成29年度の被害件数は全国で1万8,000件を越えており、7年連続で増加しています。また、全国で390億円の被害が発生しています。大阪府下では1,596件で38億円の被害が発生しており、全国ワースト3位です。大阪府下で、平成28年度の被害金額が52億円以上であったため、金額は減少しているのですが、件数は横ばいの状況です。府下の平成30年5月までの発生件数は524件と前年同期比に比べ353件減少しています。これは、大阪府警が還付金詐欺対策に力を入れ、還付金詐欺が95%減少したことが大きな要因です。一方で、オレオレ詐欺が2倍になり、増加傾向に
あることには注意が必要です。
2 大阪府警の対策
現在、大阪府警では、特殊詐欺被害が急増していることから特殊詐欺対策室が編成されています。特殊詐欺の防止策としては、犯人から押収した名簿に登録されている方への注意喚起が行われており、警察官の戸別訪問、コールセンターからの架電、ハガキの送付等の方策がとられています。また、金融機関と連携して詐取被害に遭わないように利用者への注意喚起を行っています。金融機関は、高額な送金や電話をしながらATMを操作する方には注意喚起を行うようにしており、不審な場合には速やかに警察への通報がされます。無人ATMには警察官が直接警戒にあたることにしており、その結果、還付金詐欺被害が急激に減少しました。さらに、コンビニと連携して、不審な送金、ATM操作について利用者への注意喚起を行ったり、大型ショッピングモール等で各種キャンペーンを行ったり、防犯教室等の活動も行われています。
3 被害の実態
詐欺組織の名簿に載っている被害者は、手口をあの手この手で変えてくるため、2回、3回と被害に遭っている人もいるのが現状です。また、オレオレ詐欺で多いのは、息子へのなりすまし事例です。妊娠させたからお金がかかる、会社のお金を横領したので被害弁償する必要があるなどと急な金策の必要があるといって被害者の家族を思う心情に訴えてきます。従来は、息子になりすまして、携帯電話を変えた、かけ直してくれと言って被害者に番号を登録させ、電話でのやりとりを詐取する単独の犯行が多かったのですが、会社のお金を横領した等の設定で、会社の上司や弁護士が登場する劇場型で複数が関与する犯行も増えているようです。ただ、複数関与型は、1件の犯行を完成させるために時間と手間がかかりますので、単純ななりすまし型が統計上は多くなっています。詐欺グループは、家族や警察に相談させないように、警察にばれれば息子が逮捕される、会社を辞めさせられる等の迷惑がかかると思い込ませ、金融機関で嘘の理由で払戻を行うようになるまで被害者を洗脳します。従来は、銀行員や警察が事情を聞けば、おかしな点が明らかになり、被害を防止できることが多かったのですが、最近では詳しく聞いても、被害者自身が洗脳されていることから、辻褄が合う説明をされたり、「自分のお金を払い戻してなにが悪い」と怒り出したりして、被害の防止が難しくなっています。
4 被害者の心情
特殊詐欺の被害に遭う方を、世間は、「大阪の人はお金に細かいから還付金詐欺に飛びつく」「一人暮らしの高齢女性が多い」「子供がめったに連絡してこない」「地域や友達との関わりが弱い」「判断能力に不安がある」などといった先入観で見ているのではないかと思います。たとえば、「大阪の人はお金に細かいから還付金の話に飛びつく」という被害者像ですが、実際には、行政、警察、銀行等への信頼が強い方が多く、だからこそ被害に遭ってしまうというのが実情です。対策としては、行政はお金のやり取りを電話でしたりはしないとの広報が必要なのではないかと思います。それ以外にも、世間の被害者像とは異なる方が被害に遭っています。皆さん特殊詐欺のことは認識していますし、被害に遭うまでは自分が被害者になることなどないと思って
いた方ばかりなのです。特殊詐欺は組織的な犯罪集団が個人をターゲットに犯行を行う卑劣な犯罪で、被害者に責められるべき落ち度などないのです。
5 被害回復
特殊詐欺の被害は拡大傾向にありますが、加害者への責任追及は容易ではありません。実際に検挙されるのは末端の受け子やだし子が多く、資力もないので、刑罰による制裁しかできないのが実情です。統計では特殊詐欺の検挙者の4分の1が暴力団員であることが明らかになっており、特殊詐欺が暴力団の資金源になっている可能性が高いと言わざるを得ません。末端の関与者では十分な被害回復ができませんので、暴力団のトップに使用者としての責任を追及することで、何とか被害回復ができないかと考えています。いずれにしろ安価な報酬で特殊詐欺に加担し、検挙されれば重罰を負うリスクを抱えている若年者を啓蒙し、少しでも被害が発生しない世の中になって欲しいものです。
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# by osakajotorc | 2018-08-06 16:01 | 卓話