人気ブログランキング |

2018年6月15日 卓話:黒松 克行会員

「私のこの一年」

私は紙・パルプの業界にかれこれ35年います。私の入社当時は紙・パルプといえば米国が生産・消費ともに断トツでありましたが、10年ほど前から様子が変わりました。2016年度の世界の紙・板紙の生産量は4億トン、パルプが1.8億トンでありますが、今やアジアが経済発展を背景に高成長を示し、存在感が増してきています。中国古紙事情の話をしていきたいと思います。まず、最初に2期目を迎えた習近平政権の環境政策の下、2017年末より、一部の資源ごみの輸入を禁止しました。中国政府が輸入禁止としたのは、4種類、24品目になります。廃プラスチック・繊維系廃棄物などがメインですが、古紙も1品目禁止となりました。これが、一昨年辺りから需要が増え、価格の乱高下する要因となったミックス古紙であります。品種的なことは後ほど述べますが、廃プラスチック類においても古紙にしても汚れがひどかったり、残渣が多く残るものについては購入しないという事例です。例えばペットボトルですと、中国は破砕・洗浄したものを輸入してリサイクルし、中綿にして、人形とかの中綿にするということがされていました。年間1,500万トンの廃プラが輸出されていますが、その半分を中国が輸入していました。しかし、いろいろな再生資源を輸入してきたわけですが、リサイクル工場から様々な残渣が出てくる。又、公害対策も十分でなく、汚染物質が垂れ流され、河川が汚染され、大気が汚染されるとかいう問題がおきています。2期目を迎えた習近平政権が環境対策をさまざま形で強化をしています。2017年7月にはWTOに通告し、再資源輸入禁止計画を通知しました。この辺りから私たちの業界も今までとは様変わりし始めます。業界的には少しマニアックな話にはなりますが、お聞きください。
2005年当時の中国の製紙メーカーは通年で2,400万トンから2,900万トンの古紙を毎年コンスタントに輸入していました。昨年も11月以降は伸び悩みましたがそれでも2,572万トンの実績となりました。日本も2005年頃から毎年500万トンに近い数字を海外輸出していました。輸出国のシェアーは90%が中国であります。国内のメーカー生産量が2,650万トンですので、回収率80%の自国では2,100万トンが回収された古紙となります。その内の約400万トンが中国国内で消費されることになります。この古紙20%の行方によって、国内で発生する古紙のダンボール・ミックス古紙が、投機的な商品として流通することになっていきます。通年、中国の春節時期の1月中旬~2月下旬までは物が動かない時期であり、一年を通して一番販売価格が下がる時期でもあります。昨年の1~2月も同様であり中国向けに物が動き出したのも3月に入ってからです。通常はこの流れの中で為替事情を考慮しながら、価格帯が㎏2~3円までで変動していくのですが、昨年は4月から中国バイヤーが政府の動きを察知し、品質の良い日本にオーダーが殺到します。まず手始めに中国政府は、米国・欧州・オーストラリアからのミックス古紙輸入を禁止するという政策をとりました。米国のミックス古紙は通常、道端から一括方式(シングルストリーム)で処理されるが、これだと家庭排出の生ゴミと混合してしまいます。広東省にある大手板紙メーカーの責任者は、米国産ミックス古紙の品質は過去数年間に悪化の一途をたどり、最大で20%の生ゴミと汚染物質が含まれ、含水率も20%に達すると指摘しました。欧州品のミックス古紙の品質は米国よりさらに劣悪だとみられています。日本のミックス古紙は主に雑誌古紙とオフィース古紙、雑紙から成り立っており、通常は清浄で十分選別されています。このような中国側の措置により「ジャパン・ブランド」のプレミアム性が一段と高まることになるのです。このJブランド品がミックス古紙だけではなく、板紙国の中国では段ボール需要が旺盛なため、ダンボール古紙までが8月までに㎏当たり10円以上高騰しました。私の同業者は同じ仕入れで同じ加工をして、ただ単にコンテナ詰めするだけで、毎月何千万も利益として残っていくことが夏場まで続きました。しかし、このようなことはずっと続くはずがありません。2017年9月には中国当局の新たな環境規制により、米国・欧州だけではなく、他国を対象にミックス古紙、廃プラの輸入について2017年末を持って全面禁止令を世界に通達。そして中国国内でも環境検査で不合格となった工場については輸入ライセンスの発行を停止。事実上古紙を購入できるメーカーは大手数社となりました。この中国当局のアナウンス後、米国ダンボール古紙が80ドル暴落、日本のダンボールも5円以上暴落、ミックス古紙については荷動きも取れない状況となんと1カ月で様子が変わりました。逆に中国国内ダンボール古紙が60円まで高騰するという事態になりました。年末に近づくに連れてミックス古紙の輸出は中国向けが一部のメーカーにて年内いっぱいで、東南アジア向け(タイ・ベトナムなど)には70~80$の超安値で輸出されるという状況でありました。中国は新しい年にはいり、新しいライセンスが発行されれば再度暴騰するとの説もありましたが、中国大手メーカーは静観し、古紙市況は低迷が続きました。そして、製紙の原料である古紙を買えないと判断した中国製紙メーカーは今度、パルプや段ボール原紙を買い始めます。これにより、世界のパルプ市況はドルベースで40~50$高騰し、日本のパルプメーカーも恩恵を受けることとなります。ダンボール原紙も中国輸出の数量が大幅に増え、日本国内の板紙メーカーは好調な販売状況が続きます。何せ、昨年までは作りたくても古紙がないため、作れなかった状況が続いていたのですが、今は原料が安価で発生物のほとんどが日本国内で流通する状況に変わったため、製即販の状況であります。3月以降は中国側の輸入規制がさらに厳しくなり、米国品、韓国品でシップバックが相次ぎました。そして新たに、中国当局より年間30万トン以下のメーカーにはライセンスを発行しないと通達しました。これによって、4月に入り、高品質の欧州ダンボール古紙、米国ダンボール古紙が高騰し、低グレード品との格差が広がり、低グレード品については受け入れてくれるのは東南アジアのタイやベトナムのみとなってしまいました。4月下旬、中国当局が米国CCIC(中国向けの輸出検査機関)の業務を5月4日より1ヶ月間停止すると発表されました。これはトランプ大統領がもたらした米中貿易摩擦の対抗処置との憶測が広まり、中国向け輸出が全面ストップします。米国品は東南アジアへ売りが殺到し、東南アジア市況がさらに下落します。米国品は中国向けがストップしたため価格が急落します。代わりに欧州品が再度高騰し、中国国内でも再度ダンボール古紙が高騰します。そして、ついに中国国内では大手製紙メーカーが操短を発表します。そして最終的には、古紙やパルプなどが国内で高騰したあおりを受けて製品であるダンボールや板紙が高騰するというインフレ状態になっています。総括すれば中国当局の環境規制に端を発した今回の古紙市況の乱高下ですが、中国政府の狙いは環境改善と業界再編の両方と思われます。環境投資できない中小メーカーは輸入ライセンスが発行されず、バカ高い国内古紙100%で生産せざる得ない状況となっており、コスト高で製品の値下げも出来ない状況が続いており、環境投資に回す資金の余裕もありません。一方で、輸入ライセンスが発行されている大手メーカーは安価な輸入古紙を購入した分だけコストが下がり、各社とも最高益を計上するほど業績は好調です。いわば輸入ライセンスが企業の収益と存続のカギを握っている訳で、ライセンスの発行が利権となりつつあるのも事実であります。中国大手メーカーは業界の淘汰が進むまで、現状のライセンス制度の存続を望むでしょうし、その為には中国政府の言いなりにならざる得ない状況が続くと思われます。昨年来の古紙市況の乱高下は明らかに人為的な相場となっており、暫くは中国に振り回される状況が続くと思われます。
 

by osakajotorc | 2018-06-26 12:31 | 卓話

<< 2018年6月22日 会長 薦田 光    2018年6月15日 会長 薦田 光 >>