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2017年9月22日 卓話:山本 健策 会員

「M&A」

M&Aとは、Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略で、複数の企業を一つの企業に統合したり(Mergers:合併)、ある企業が他の企業や事業を買い取ったり(Acquisitions:買収)することをいいます。自社に不足している経営資源(ヒト・モノ・カネ・技術・情報など)を補い、事業の拡大を行うための経営戦略の一つとされています。
M&Aには種々の手法(スキーム)がありますが、基本的なものとして、①合併(吸収合併)、②株式譲渡、および③事業譲渡があげられます。まず、①合併(吸収合併)とは、一方の会社(A社)のみを残し、他方の会社(B社)を消滅のうえ、合併により消滅するB社の権利義務の全部を、合併後存続するA社に承継させるスキームをいいます。多くの場合、消滅するB社の従前の株主に対しては、買収の対価としてA社の株式を交付することになるため、A社としては資金準備の必要がないというメリットがあります。また、A社はB社を包括的に承継するため(包括承継)、A社は、B社が有していた免許や許認可、契約関係(取引関係)を、そのまま全て引き継ぐことができます。これに対し、合併は包括承継であることから、B社の不要な資産や帳簿に計上されていない債務(簿外債務)があった場合でも、A社は全て引き継がなければなりません。また、B社の従前の株主が新たにA社の株主として加わることになるため、A社が従前は同族経営を行っていた場合、その継続が困難になるケースもあります。
次に、②株式譲渡とは、買い手側の会社(A社)が売り手側の会社(B社)の株式を買い取ることで、B社の経営権を譲り受けるスキームをいいます。これは単に株式の売買であるため、手続が簡単で迅速であるというメリットがあります。また、買収対象会社であるB社は別組織(子会社)として存続するため、別組織として運営することができ、機動的な会社経営が可能となります。さらに、株式譲渡も包括承継であることから、A社は、B社が有していた免許や許認可、契約関係(取引関係)を、そのまま全て引き継ぐことができます。これに対し、株式譲渡の場合、A社はB社の株式を買い取ることになるため、B社の規模によっては巨額の買収資金の準備が必要となります。また、株式譲渡も包括承継であることから、B社の不要な資産や簿外債務があった場合でも、A社は全て引き継がなければなりません。さらに、③事業譲渡とは、買い手側の会社(A社)が、売り手側の会社(B社)が有する財産を個別に買い取るスキームをいいます。A社は、合併や株式譲渡の場合とは異なり、B社の特定の財産のみを承継するため(特定承継)、簿外債務を引き継がないという大きなメリットがあります。また、同じ理由から、A社は、B社から承継する従業員や資産を限定し、必要なものだけを買い取ることが可能となります。これに対し、事業譲渡の際には、承継する財産を個別に特定していく必要があるため、手続が煩雑となります。また、特定承継であることから、A社は、B社が有していた免許や許認可を引き継ぐことができず、新たに免許や許認可を取り直す必要があります。さらに、A社は、B社の取引先との契約を承継できない場合もある、というデメリットがあります。ここで、買収対象会社の契約関係(取引関係)の承継という視点からM&Aをみた場合、まず、契約書における「譲渡禁止条項」が問題となります。これは、契約相手方の同意を得ずに契約関係を第三者に譲渡してはならない、という規定で、多くの契約書に一般的に規定されているものです。この点、合併や株式譲渡などの包括承継の場合には、「譲渡」には該当しないとされており、譲渡禁止条項は問題となりません。しかし、特定承継(事業譲渡)の場合には「譲渡」に該当してしまうことから、A社は、B社の取引相手の同意を得なければ、B社と取引相手との契約関係(取引関係)を引き継ぐことができなくなってしまいます。また、B社と取引相手との契約書に、「Change of Control(支配権の変更)」を禁じる条項が含まれている場合があります。具体的には、主要な株主の変更など、会社の支配に重要な影響を及ぼす事実が生じたときには、契約を解除できる、という条項です。この場合には、合併や株式譲渡などの包括承継の場合であっても、同様に、A社は、B社の取引相手の同意を得なければ、B社と取引相手との契約関係(取引関係)を引き継ぐことができません。M&Aを行うに先立って、買収対象会社を調査する必要があり、これをデューデリジェンス(Due Diligence:DD)といいます。DDには、ビジネスDD(対象会社のビジネスや事業性の評価)、財務・税務DD(対象会社の資産価値や財務・税務の状況の調査)、および法務DD(対象会社の法的リスクの調査)があります。さらに、承継資産に工場が含まれている場合、土壌汚染対策法の規定により莫大な費用を投じて土壌汚染除去等の措置を講じなければならなくなってしまうリスクがあります。そこで、必要に応じて事前にボーリング調査を行うなど、「環境DD」を実施することも検討する必要があります。

by osakajotorc | 2017-09-29 14:26 | 卓話

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