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2016年7月8日 山本 健策 会員

「ビジネスで求められる知財活用」

知的財産権とは、発案・発明・創作、ソフトウェア、企業や商品のブランドなどの無形の財産に対する権利をいいます。知的財産権にはいろいろな権利が含まれますが、主として、「発明」を保護する特許権、「商標(トレードマーク)」を保護する商標権、「著作物」を保護する著作権などがあります。
まず、特許の保護の対象となる「発明」とは、特許法において「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定義されています。すなわち、「発明」に該当するためには、①自然法則を利用していること、②技術的思想であること、および③創作であること、の三つの要件を満たす必要があります。
例えば、野球や麻雀のルールは、人為的な取り決めに過ぎず、自然法則を利用していないため、要件①を欠き、「発明」とはみなされません。また、個人差のある「技能」(フォークボールの投球方法など)は「技術的思想」ではなく、要件②を欠くため、「発明」とはみなされません。さらに、天然物や自然現象等の単なる発見は「創作」ではないため、要件③を欠き、「発明」ではないことになります。
また、「発明」であったとしても、必ずしも特許権が付与されるわけではありません。特許権が付与されるためには、さらに①産業上の利用可能性、②新規性、および③進歩性の三つの要件を満たす「発明」であることが必要とされています。このうち、例えば医療行為については、産業上の利用可能性がないとして、特許の対象にはならないとされています。また、特許を受けるためには、新しい「発明」でなければならず、既に知られている技術は「新規性」がないとして、特許を受けることができません。さらに、従前に知られていた技術と同一ではない場合(新規性はある場合)であっても、従前に知られていた技術から容易に思いつく発明は、「進歩性がない」として、特許を受けることができないとされています。このように、特許権を取得するために、いくつかのハードルを乗り越える必要があります。
特許権が取得できると、20年間、その発明を独占することができます。具体的には、他社にその発明を使用させて、使用料(ロイヤルティ)を得ることができますし(いわゆるライセンス)、無断でその発明を使用された場合には、特許侵害として、損害賠償請求や差止請求などをすることができます。
次に、商標権により保護される「商標(トレードマーク)」は、消費者が商品を購入したり、サービスを利用したりするときの「目印」としての役割を果たします。商標の期限は10年ですが、更新可能であるため、更新し続けることで、事実上、半永久的に保有することができます。
商標には、文字、図形、記号、立体的形状やこれらを組み合わせたものなど、様々なタイプがあります。また、商標法改正により、昨年4月1日から、新しい商標(動き、ホログラム、音、色彩、音、位置)の出願が開始されています。
最後に、著作権の対象となる「著作物」は、著作権法において「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されています。すなわち、著作権はあくまでも「表現」を保護するものであり、「表現」の背後にある「アイデア」は著作権では保護されません。
例えば、他人の料理本で紹介されている料理方法(アイデア)を無断で使用しても、著作権侵害にはなりません。また、料理方法の説明の仕方(表現)を変えただけで、同じ料理方法について自分で料理本を出版しても、著作権侵害にはなりません。このように、いわゆる盗作と著作権侵害とは異なるものであり、注意が必要です。
著作権侵害を避けるためには、他人の著作物を利用するためには、その者の許諾を得なければならないのが基本ルールであり、安易なコピペはリスクが高いことを認識する必要があります。例えば、文章については、コピペせずに自分で作成し、写真については、著作権フリーの素材を使用するか、または自分で撮影するといったことを心がけ、著作権侵害と言われないように注意することが重要です。

by osakajotorc | 2016-09-13 13:44 | 卓話

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