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2018年5月11日 青少年奉仕月間卓話 担当:青少年委員会 杉野 政史委員長

青少年奉仕月間卓話 「夜間定時制高校の今」
大阪府立成城高等学校 准校長 麻野 克己様


高等学校の定時制通信制課程の教育は、昭和23年(1948年)に設けられた学校教育法制定時から始まっています。70周年をむかえ、昨年6月に大阪府高等学校定時制通信制教育70周年記念式典を開催することができたところです。特に定時制課程では、多くの勤労青少年に後期中等教育の学習機会を保障するという重要な役割を担ってまいりました。戦後の混乱した社会においては、定時制に学んだ青少年たちが力を発揮し、社会の発展に大きく寄与したことは、万人が認めるところでした。すでに退職された先生方から昔の定時制高校の様子を聞くと、たとえば学習環境面では、全日制課程と定時制課程は同じ教室を使って授業を行うのですが、定時制では冬の教室は寒くて授業に集中できないのでストーブが設置されていたそうですが、全日制の生徒は使用することができず、不満の声が出ることがよくあったそうです。ですが、昼に働き夜に学ぶ生活の大変さから、全日制の生徒からも理解が得られていたようです。さて、時代の流れと共に都市化や核家族化などを背景として、昭和50年代以降は家庭の教育力の低下や社会連帯意識の希薄化が進む中で、青少年非行の増加や「いじめ」「校内暴力」の頻発などの教育課題が注目されはじめました。平成3年4月には中央教育審議会が「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革について」を発表し、高等学校を、義務教育の修了者のほとんどすべてが学ぶ国民的な教育機関であるとし、各高等学校における教育内容や教育水準については一律に固定的に考えるものではなく、生徒の実態に応じて幅広く柔軟に実施することを示しました。その中で定時制高校は、これまでの勤労青少年の学習機会の場としてだけでなく、中途退学その他の理由で一度高等学校を離れた者の再挑戦の場として、また生涯学習を担う場として充実させていくこととなりました。近年では、従来の勤労青少年に加えて、全日制の課程から編・転入学をする生徒、不登校経験者や中途退学者、学習障がいのある生徒、日本語指導を必要とする外国籍の生徒、また15歳から70歳代までの年齢層の生徒など、多様な動機や学習歴をもつ生徒の入学が増えてきています。とはいえ、少子高齢化が進んでいる中で、定時制高校に通う生徒は、全体としては減少しています。入学志願者の数字で見ると、平成16年度には府立の定時制高校で1900人余りの志願者がいましたが、平成29年度には140名弱にまで減少しています。本校でも生徒在籍人数は100人を切り、現在4学年合わせて64名となっています。勤労学生の数も減少し、現在では5割強でそのほとんどがアルバイトという状況です。このような状況の中で、本校では生徒たちが自己理解を深め、将来への目標を持ち、自ら学ぶ姿勢・力を身に付けていけるよう取り組んでいます。夜間という限られた時間の中で、知識・技能を学ぶだけでなく、人間関係のつながりの大切さを大事にした教育に取り組んでいます。文化祭や体育祭などの行事などが代表的なものですが、日々の教職員からのコミュニケーションを大事にした活動を行っているのが本校の自慢でもあります。今後は、本校で学んだコミュニケーションをはじめとする様々な学習内容を、実際の社会で発揮することが大事であり、そのためには学校と地域社会が連携しながら子どもたちの資質・能力を育んでいくことが大切だと感じているところです。これからも本校の教育活動にご理解とご支援をよろしくおねがいいたします。

# by osakajotorc | 2018-05-29 11:31 | 卓話