2016年2月19日 富永 真之会員

「会計不正 と 監査人」

近年だけでもオリンパス、東芝など名門企業の不正な会計が内部告発で明るみになりました。そこで本日は不正会計の内容と会計監査人がどうして不正を発見できなかったのかについて私見を述べます。まず、会計の不正には、3つに区分することができます。
不適切会計、不正会計、粉飾決算です。「不適切会計」とは故意ではないケアレスミスも含む広い概念です。「不正会計」とは不当又は違法な利益を得るために他者を欺く意図的な行為を意味します。そして最後の「粉飾決算」とは強制捜査の見通しが強まった時に使われる表現です。それでは、東芝の問題は、どの定義が一番当てはまるかと言いますと、経営者自ら約2700億円もの利益拡大の指示を組織全体に出していることから、意図的であり、どう考えても通常の概念からすると、正に「粉飾決算」です。少なくとも「不正会計」だと思います。ところが、第三者委員会の調査報告でも穏便な内容で「不適切会計」と表現し、大事ではないかのような印象を世間に与えようとしたように思われてなりません。その調査報告の結果、何度も提出期限の延長が認められて、過年度の有価証券報告書の修正を粛々と提出し、なぜか上場を維持しているだけでなく、首謀者と指摘されている経営者も全く告発される気配がありません。過去にはもっと小規模な粉飾決算の事例では、記憶にある中でもライブドアやインデックス社などが、上場廃止や、経営者の逮捕・実刑判決となりました。そもそも東京証券取引所では、ウソの報告や、有価証券報告書の提出が期限どおりにできない場合には、上場廃止という基準を設けてきました。東芝の場合も本来昨年の6月末提出期限のところ、何度も提出期限の延長申請が不可思議なことに認められて上場を維持しているのです。この例外的な処理は、東京証券取引所だけで決定したとはとても思えません。ここにも「too big to fail」(大きすぎて潰せない)というような発想が政府にあったのではないでしょうか。東芝は、原発メーカーであり、借入債務が約2兆円もあり、また経団連の主要構成メンバーです。政府の意を受けて、金融庁は上場を維持させて金融市場の混乱を避けたいし、検察庁はこの名門企業から逮捕者を出すことを躊躇って強制捜査に踏み切れずにいるように思えます。この政府の意向は、穿った見方をすれば、第三者の調査報告書で玉虫色の「不適切な会計」という穏やかな表現で始まった一連の問題後処理の時から始まっていたかもしれません。不可思議なことに今回の不祥事では、取締役だけでなく、監査役も全くその責任は不問となっています。辞任はさせられていますが。では、この東芝の不祥事を会計監査人(監査法人)はどうして見つけられなかったのでしょうか。可能性は2つあります。一つは、従来から薄々気づいていたが、監査法人内で過去の上司が見逃してしまったことを今さら発表できずに、ズルズルと経営者に付き合ってしまったケースです。もう一つは、現行の法制度下で、内部統制が整備され有効に運用されているということ前提としている現在の監査手続きでは、経営トップが主導した粉飾決算の場合、組織全体にわたって完璧な粉飾資料を作成していることが多く、監査人だけでは発見できないことが多いです。これは監査の限界でもありますが、おそらく検察も見つけることはできないでしょう。不祥事のほとんどは、内部告発で白日の下に晒されることを期待するしかないことも事実です。そもそも経営者が粉飾をするという企業そのものが上場企業であってよいのかという疑問があります。また今回の東芝の場合、名門企業がそんなことをするはずがないという意識が、監査の現場で油断を招いた可能性も否めません。このような事例は、過去にもカネボウ、オリンパスなど枚挙に暇がありません。それにしても、東芝の歴代の社長が、ロータリーの4つのテストのような行動規範を理解していたら、自己保身のために真実ではない大掛かりな粉飾決算を何か年にもわたって連綿と行ってしまうというような情けないことにはならず、自制できたのではないかと残念に思います。経団連の会長を輩出した歴史ある企業の経営者には、高潔な人格を求めたいと市井の民として切に思うばかりです。
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by osakajotorc | 2016-03-15 15:54 | 卓話

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